名古屋地方裁判所 平成11年(ワ)1465号 判決 1999年11月05日
原告
中西銀子
ほか一名
被告
髙橋隆之
主文
一 被告は、原告中西銀子に対し、金七三六万五七〇〇円及び内金六三六万五七〇〇円に対する平成八年一二月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告中西浩司に対し、金七三六万五七〇〇円及び内金六三六万五七〇〇円に対する平成八年一二月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用はこれを一〇分し、その六を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。
五 この判決は、第一、第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告らに対し、それぞれ金一一六〇万九五〇〇円及び各内金一〇六〇万九五〇〇円に対する平成八年一二月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、原告らが左記一1の交通事故の発生を理由に被告に対し、民法七〇九条により損害賠償請求をする事案である。
一 争いのない事実
1 交通事故
(一) 日時 平成八年一二月五日午後九時三〇分ころ
(二) 場所 名古屋市北区柳原三丁目一一番二二号先路上
(三) 加害車両 被告運転の普通乗用自動車
(四) 被害者 亡中西美弘(以下「亡美弘」という。)
(五) 事故形態 前記路上を西から東へ走行していた加害車両が亡美弘に衝突した。
(六) 結果 本件事故により亡美弘が死亡した。
2 責任原因
被告は、加害車両を運転して前記路上を走行中、前方を注視してその安全を確認して進行すべき注意義務があるのに、これを怠ったまま進行した過失により、本件事故を発生させた。
3 当事者
原告らは亡美弘の相続人である(相続分各自二分の一)。
4 損害
(一) 葬儀費用 一二〇万円
(二) 弁護士費用 二〇〇万円
二 争点
1 事故の態様及び過失相殺割合
(一) 被告
亡美弘は本件事故当時道路上に横臥していたものであり、亡美弘の過失割合は七割とするのが相当である。
(二) 原告ら
亡美弘が本件事故当時路上に横臥していたとしても、その原因は突発的な発作あるいは事故によってもたらされたものであり、他方、被告は、飲酒の上、制限速度時速四〇キロメートルのところを時速五〇キロメートルで走行し、かつ同乗者との雑談等で注意力が散漫になっていたものであるから、本件事故惹起のほとんどの責任は被告にあって、亡美弘の過失割合は一割を超えるものではない。
2 損害
第三争点に対する判断
(成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証については、その旨記載することを省略する。)
一 事故態様及び過失相殺割合
1 甲第二号証及び弁論の全趣旨によれば、加害車両の損傷は前部右側バンパー下部の損傷等車体底部に集中しており、ボンネット、フロントガラス等車体前面に損傷は認められないこと、亡美弘が加害車両に乗り上げた痕跡はないこと、被告自身、本件事故直前に、路上に大きい黒い固まりを発見したと述べていること、亡美弘の身体の損傷のうち主要なものは死亡原因となった胸骨、肋骨の骨折、臓器の損傷、左足関節及び右大腿骨の骨折であることが認められ、これらの事実に照らすと、亡美弘は、本件事故当時、路上に横臥していたものと認められる。
2 亡美弘が路上に横臥していた原因は不明であって、原告らが主張するような突発的な発作あるいは他事故によってもたらされた可能性があるとしても、夜間、路上に人が横臥していることは運転者にとって予想し得ないことであって、本件事故現場はこれを予測させるような場所とも認められないから、このような場合に運転者に全部の責任を負わせることは公平の原則上相当とはいえない。
しかしまた、全掲各証拠によれば、被告は、本件事故当時、酒気を帯びて、制限時速を一〇キロメートル程度超える速度で、かつ、同乗者との雑談に気を取られて前方を十分に注視せずに進行していた点で著しい過失があることも明らかである。
3 以上の事実によれば、亡美弘と被告の過失割合は四対六とするのが相当である。
二 争点2について
1 葬儀費(請求額一二〇万円) 一二〇万円
当事者間に争いがない。
2 治療費(請求額一万九〇〇〇円) 一万九〇〇〇円
甲第二号証及び弁論の全趣旨によれば、治療費として右の金額を本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。
3 慰謝料(請求額二〇〇〇万円) 二〇〇〇万円
甲第二号証、弁論の全趣旨により認められる亡美弘の年齢、生活状況等に照らし、死亡による慰謝料は右の金額を相当と認める。
4 小計
二一二一万九〇〇〇円
5 過失相殺
前記認定の亡美弘の過失割合に従って控除すると、被告が賠償すべき亡美弘の損害は一二七三万一四〇〇円(原告各自六三六万五七〇〇円)になる。
6 弁護士費用(請求額各自二〇〇万円)
原告各自一〇〇万円
当事者間に争いがない。
第四結論
よって、原告らの本訴請求は、被告に対し、各自七三六万五七〇〇円及び内金六三六万五七〇〇円に対する本件事故の日である平成八年一二月五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容して、主文のとおり判決する。
(裁判官 堀内照美)